J・K・ユイスマンス J.K.Huysmans


review

さかしま



なんと読み終えるのに1年もかかってしまった。
こんなに長く1冊の本に関わっていたのも初めてで、感慨深いものがあります。
ひきこもりの書いた枕草子とでも言おうか。
ストーリー性はなく、田舎にひきこもった主人公がひたすら文学や芸術について自分の好みを語っている話。
訳注だけで62ページ(しかも二段)もあり、読めない漢字、難しい言葉。
読んでいて決して明るい気分にはなれない。
それでも電子辞書を片手に一年間頑張れたのは、澁澤龍彦による上質な訳文のお陰。
また、これでもか、と出てくる薀蓄に、読んでいる自分が少し賢くなったような錯覚まで味わえます(笑)。
少しくらいは頭のどこかに引っかかってくれていることを願いつつ。