Grey & Pink '04

(Featuring Richard & Dave Sinclair)
 


 
 
 
2004年
10月15日(金) 東京・渋谷O-West
10月16日(土) 東京・渋谷O-West

  
   Vocals、Bass、Guitar Richard Sinclair
Keyboard Dave Sinclair
Drums 芳垣安洋
Guitar 鬼怒無月
Keyboard 清水一登

 

(カッコ内は収録アルバム名)
 
1. Disassociation
2. Keep On Caring
3. That day

Caravan Medley
 4. The dabsong conshirtoe
 5. The love in your eye
 6. Videos of Hollywood/
 7. Where but for caravan would I
 8. Place of my own
 9. Hello hello
 10. If I could do it all over again , I'd do it all over you

11. Wanderlust
12. Going For A Song
13. Always There
14. Oh Caroline

<Intermission>

15. What In The World
16. Winter wine
17. What's Rattlin' ?
18. In the land of grey and pink
19. Out Of The Shadows
20. A.A Man
21. Nine feet underground
22. It Didn't Matter Anyway
23. Love to love you
24. Golf girl


 
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いとこのDaveを連れてRichard Sinclairがやってくる!この2人はフリージャズの奔放さにユーモアを加味した不思議な音楽、カンタベリー・ミュージックを語る上で欠かせない超有名人だ。カンタベリー・ミュージックというジャンルでは、Soft MachineやHenry Cowなどマニアックで小難しいバンドが有名だ。しかし一方でポップスの流れを汲む、ノスタルジックで人懐こいメロディで親しまれるCaravanというグループがいる。彼らはそのオリジナルメンバーとして活躍していた。Richardは1979年、2002年に続く3度目の来日。仕事に振り回されっぱなしで2002年の来日を知らなかった筆者は、今回は死ぬような目にあったとしても観に行く覚悟であった。当日はすこぶる体調が悪かったのだが。

なおりかけた風邪がぶり返しそうな状態だった筆者は、寒気がするカラダを引きずって17:40にはカイシャを引き上げ会場に向かった。というのも、チケットには1階がスタンディング、2階が自由席と書いてある。なんとしてでも2階自由席で観ねば。整理券番号が若かったので、早く行けば席につける!そんな気持ちで早めに赴いたのだった。

会場のO-Westに着いて、案内のおねーさんが「番号順に呼びますから、いったん下がってくださーい」と言うのでコンビニエンスストアの前で待っていたら、なにやら変てこなニット帽をかぶったガイジンが前からやってきた。そして待っている観客の中からお友達を見つけたらしく、とても親しげに抱き合った後、その人と一緒に雑踏の中に消えて行った。すると後ろの方から「あれって、Richardじゃないの?」。そう。まさしくその怪しいガイジンこそはRichardその人だったのであった。

開演時間近くになって、件のRichardはひょろひょろとステージ裏に戻ってきた。おいおい、これから準備かい?スタッフがマイクの準備に取り掛かり始めた。間もなく再びステージに戻ってきた彼は、「んー。今マイクの準備中だからさ、5分ほど待っててねん♪」。5分経った頃ギターのチェックを始めながら、鼻歌を歌っている。そしてDave Sinclair登場。2人でリハーサルをおっぱじめ、“Nine Feet Underground”のクライマックスの部分を歌い始めた。よく通る声だなぁ。やっぱりキレイだ。歌いながらしきりにリモートマイクの位置を直したり、帽子をかぶりなおしたりしている。しかしリハはいっこうに終わる気配を見せない...え?これってもう本番なの?どうやらCaravan時代の曲をメドレーでやるらしい。ちょっと足早で投げやりなカンジもしたのだが、まるでおしゃべりをしているかのようなリラックスした雰囲気で演奏は始まっていたのであった。

珍しかったのは、“The Dabsong Conshirtoe”など後期の作品をRichardが歌ったこと。これはもちろんリーダーのPye Hastingsのボーカルパートなので、貴重な(?)テイクと言えるかもしれない。Richardは何でも「Richard節」にしてしまう。Pyeのような色気はないのだが、透明感があり、すべてを包み込むようなまろやかで暖かな声だ。曲の合間も鼻歌を歌いっぱなし、なんだか緊張感ゼロのゆる〜いライブである。ちょっと気難しそうなルックスのDaveもピアニカでイントロを弾いたりで、茶目っ気たっぷり。Caravanメドレーの後は、なんと!Matching Moleの名曲“Oh! Caroline”までやってくれるサービスぶり。すると...“I Love You Still, Caroline♪”のところで、Daveのキーボードにトラブル発生。しかしファンというのはよくしたもので、客席ほとんどがコーラス隊と化し、トラブルをカバー。事なきを得たのであった。

こうしてリハーサルとも本番ともつかぬ第1部を追えた後は、約10分の休憩が入っていよいよバンド編成の演奏による第2部へ。

今度はかっちりとしたバンドアンサンブルが入るのだが、メンバーが若くて(とはいっても筆者と同じくらいの年回りだが)、元気がいい。特に鬼怒無月氏のギターはけたたましく、“Nine Feet Underground”クライマックスではオリジナルより攻撃的なプレイを披露した。このメンツだと、ジャズっぽい曲よりはギターを前面にフィーチャーしたロックっぽい曲の方が合うのではないだろうか?Richardがメドレーでやった1stの曲や、“Waterloo Lily”なんかもやってほしかったな。Jimmy Hastingsのフルートのパートは清水一登氏のキーボードがカバー。腕が達者なのになんだかシャイな彼は、しきりにRichardにからかわれていた。

Richardを観ていると、やはり2002年の3月くらいに来たKevin Ayersを思い出す。ひょうひょうとしていてかったるいことがキライ。ほんとにワガママなオヤジなんだが、なんだか憎めない。観ている人たちがその一挙手一投足におろおろし、つい手を出したくなってしまう。今回のステージでは、Richardは準備中になかなかギターのストラップをうまくかけられず、これを見かねたスタッフの女の子が手伝っていたっけ。

多くのブログサイトでは、彼のプロとしての意識を疑問視する声が多かった。もはやかっちりやることはできないんじゃないかな、と思っていたら2日目の渋谷はまるで別人のようだったという。これは惜しいことをした!インスト曲で縦横無尽なベースラインを堪能したかったな。コレに懲りずまた呼んでください。アレンジが大変そうだけど。

(10/15 渋谷O-West、Issei)
 
 
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