レニー・クラヴィッツ



You are the force and strength in my life today.

   

1964年5月26日生まれ。父はユダヤ系のNBCプロデューサー、母は黒人の女優。
ニューヨーク市マンハッタンのアッパー・イースト(白人の街)とブルックリンのベッド・スタイ(黒人の街)で子供時代を過ごした。スパイク・リーの一連の映画を見る限り、人種問題は多民族国家であるアメリカであっても相当根深い問題で、一番差別の対象となるのが、混血の子だということだから、レニーも複雑な自我を形成したことだと思う。彼の音楽シーンを見る限り、そのアイデンティティは黒人側に近いものを感じる。
彼の音楽活動は、ロサンゼルスへ移り住んでからで、カリフォルニアボーイズコーラスやメトロポリタン・オペラに出演し歌い始める。ビバリーヒルズハイスクール卒業の頃には、ギターやベース、ドラムス、オルガン等の多種の楽器をマスターしてしまう。そのせいか、彼のアルバム製作は、基本的に一人ですべての楽器を演奏する形がとられいてる。
自らのルーツを、ジョン・レノン、ジミ・ヘンドリックスという彼の音楽は、「ブラックミュージック」という単純な区分けには収まらないもので、「ブラックらしくない」という理由から、なかなかレコード会社と契約できなかったという。そのため1stアルバム「Let Love Rule」は、ヴァージンとの契約前に一人で演奏しレコーディングを済ませてしまったというのだから、行動力があるというか、よほど自分の音楽に自信があったのだろう。
実際、彼の多くの楽曲を聞いて感じるのは、その絶対的な自信、信頼(自分の才能もしくは神への)から生まれる力強さと、安心感である。
「音楽は、その本来あるべき暖かさで鳴るべきだ」と彼はいう。
そんな音楽表現にふさわしく、楽器構成はいたってシンプル。デジタルサウンドは遠ざけられる。
同じマルチ・プレイヤーとして、プリンスの名前を思い浮かべてしまう。二人の音楽の方向は、プリンスが革新的であるとするなら、レニーは保守的とまったく異なったようにみえるが、己の音楽に対する絶対的な自信という点では相通じるものがあるように感じる。


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