・・・1週間戦争・・・連邦軍の被った本当の損害・・・


 いわゆる『3秒の布告』と呼ばれる開戦時の電撃的な宣戦布告と同時の怒涛のジオン公国の4サイド攻撃、総人口の半分が失われた(※1)側面が強調され、ジオン公国緒戦の大勝利と知られているが、実際はどうだったのか?

 各サイドで殲滅されたのは、サイド5(ルウム)を除けば、それぞれのコロニーの防衛を任された2戦級のいわば、後方部隊だったのはあまり知られていない。ジオン公国が、本格的な戦争行為に至るなど想像もしてない連邦軍首脳部は、本格的な交戦力を持った第1戦部隊を配備するなど笑止以外の何ものでもなかった。また、攻撃があるとすれば、ルナ2そのものに対してであると信じてもいた(※2)

 実際、各サイドの防衛軍司令部にしても自らが攻撃されるなど考えたこともなく、ジオン艦隊の不穏な行動を察知したときには、絶対数も足りない第2線級の後方部隊向けに編制された軍隊では為す術もなかった。

 これを裏付けるように、独自に軍を動かしたレビル旗下の第1機動艦隊によって守備されたサイド5は、ジオンの攻撃を跳ね返している。つまり、この時点ですら、4分割されたジオン攻撃艦隊は、連邦軍の本格的な抵抗の前には、撤退を余儀なくされたのだ。

 1週間後のルウム戦役では、さすがの第1機動艦隊もジオン宇宙攻撃軍の総力を上げた攻撃の前に、敗退を余儀なくされた。しかし、この戦闘とそれに引き続く『ブリティッシュ作戦』では、後に知られるように勝ったジオン側も終戦まで回復できないほどの損害を受けたことも衆知の事実である。

 こうして、4つサイドの住民全てが殺戮され、地球に落とされたコロニーによって生み出された莫大な損害で連邦政府首脳を一時的なショック状態に陥らせた以外には、ジオン側が、宇宙での作戦行動を控えねばならないほどの損害と引き換えに、達成しえた戦果は、連邦軍の第1、第2機動艦隊(※3)を、半年に渡る稼働不能状態に追い込んだだけというものであった。万全の準備をして攻撃を掛けたジオン宇宙攻撃軍の総力を上げた戦果が、たったそれだけでしかなかったのだ。この時点でさえ、連邦軍には、ほぼ無傷の第3機動艦隊(※4)が存在しており、また第1と第2機動艦隊の残余での新たな艦隊(※5)の再編もなされていた。

 では、何故、戦後に至っても『1週間戦争』の損害の多さが喧伝されているのか?それは、軍需産業が、いかに大きな影響力を軍部とともに持っているかを考えれば自明の理だろう。

 

※1:未曾有の事態に、正確な記録は不明であるが、戦後の調査では4割強程度であったする調査が有力である。
※2:誰が、民間人が多勢を占めるコロニーの住民虐殺を予想しえただろう?
※3:第2機動艦隊は、主に『ブリティッシュ作戦』阻止のために戦闘参加した。第1機動艦隊ほど損害を受けたわけではない。
※4:第1、第2と比較するとその戦闘力は若干低かった。
※5:再編艦隊は、その後の月面マスドライバー基地攻撃で消耗してしまった。

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