ぶつくさと〜く
【Vol.120】 劇的 (2012.1)
さぁ、新しい一年が始まりましたっ!
残念ながら明るい話題が少ないこのご時世ではありますが、
せめて自分の心の中だけでもほんのり明るく、
そして、少し遠くの空を見上げて胸を張って歩んで行きたいと思う、今日この頃です。
みなさんにとっても、明るい希望に満ちた素敵な一年になればいいですねっ!
さて先日、デリーの自宅で、何気な〜くTVのスポーツチャンネルを見ていた時のこと。
画面に「FCバイエルン・ミュンヘン vs インド選抜」という文字が表示されているのに、ふと気付きました。
そう、オランダ代表のロッベンやフランス代表のリベリー、ドイツ代表のシュヴァインシュタイガーらを擁する、
あのドイツの強豪サッカークラブが、何故かインド選抜チームと親善試合をするとのことで、
その試合の生中継の予告コマーシャルが、たまたま流れていたのでした。
(インドで最も有名なサッカー選手「バイチュン・ブティア」の引退試合でもあったようです)
「ほぉ〜、珍しい試合があるもんやなぁ」と興味を惹かれたので、早速ネットで調べてみることにしました。
すると、ドイツまで出向いて行くのかと思いきや、バイエルンがわざわざインドまでやって来るとのこと。
そしてその開催地は・・・なんとここ、デリーではないですかっ!
まともなサッカーなど滅多に見られる国では無いので(クリケットはワールドクラスなんですけどね)、
いきなり「ふぁ〜っ」と舞い上がって、ネットで調べたその勢いで、すぐにチケットを購入してしまったのでした。
チケット購入時の説明に「チケットは当日スタジアムでピックアップして下さい」と書いてあったので、
あとはな〜んにも準備も手続きもする必要はありません。
偶然発見した思わぬ「ご褒美」に、若干興奮冷めやらぬまま、当日を楽しみに待つことにしました。
試合前日。
会社でごく普通にお仕事をしていると、夕方頃、一通の電子メールが届きました。
そこにはこんなことが書いてありました。
「チケットを発送しました」
いやいやいや、チケットは当日ピックアップって思いっきり書いてあったやん。
しかも前日の夕方に発送しました、って・・・どう考えても間に合うはずないやんっ!
これってまさか、どこでもチケットを受け取れず、スタジアムに入られへんという最悪のオチとちゃうんか〜っ!!
(ぞ〜っ!)
ほんと、毎度毎度のあり得ない事件っぷりに、「また出たよ、インド!」と思いながらも、
とりあえずもう少しだけ待ってみることにしたのでした。
(まぁ待つと言っても、翌日がもう試合の日なんですが・・・)
当日朝。
門番さんに確認してみたのですが、当然のようにチケットなんぞ届いていません・・・。
さすがに「こらもうあかんやろ」と思い、コールセンターに電話をかけなあかんなと諦めていました。
すると、昼前くらいに、また別のメールが届いたのです。
「チケットはスタジアムのこの場所でピックアップして下さい」
いやいやいや・・・ほんま、どっちやねんな〜っ!
思いっきりノートパソコンの画面にツッコみながらも、
まぁ「チケット発行したのに手元に届かず」という最悪のシナリオは回避できたようなので、
とりあえずはほっと一安心・・・。
そして夕方、多少の混雑はあるだろうと思ったので、少しだけ早く出発して、
試合が行われる「ジャワハルラール・ネルー・スタジアム」へと向かったのでした。
試合開始の30分以上前、私は無事に、
指定されたスタジアムのチケットピックアップ場所に到着しました。
んが・・・恐らくピックアップ待ちと思われるインド人の群れが、
ざっと1,000人以上は溢れ返っているじゃありませんか・・・。
しかもチケット発行手続きを行っていると思われるピックアップ場所は、
日本の小学校の運動会でよく「大会本部」として使われる、白い屋根だけの小さいテント、それがぽつんと一つ。
その上、肝心のチケット発行の窓口は、なんとたったの2箇所だけ・・・。
「この1,000人以上をどうやって2箇所でさばけるんじゃい!
1人1分で終わらせたとしても500分(=8時間以上)かかるがなっ!」と思いながらも、
他に手段が無いので、仕方なく行列に並んでみることにしたのでした。
行列にすぐ平気で割り込んで来るインドのお国柄のせいか、
それとも男性同士でも平気で仲良く手を繋ぐインドのお人柄(?)のせいかは分かりませんが、
例によって、後ろのインド人男性に隙間が空かないよう「ぴったり」と体をくっつけられ(試合前から密着マーク)、
微妙に感じられる生温かさに泣きそうになりながらも、列に並び続けるしかありません。
試合開始まであと20分となっても、当然行列はほとんど進まない・・・。
あと15分、あと10分となっても、見ている光景はほとんど何も変わらない・・・。
もうどう打開することもできないこのデッドロック状態・・・。
ここで試合が終わるまで並ぶんなら、とっとと諦めて家に帰ってテレビ中継見ようかなぁ・・・。
悲し過ぎる「ベストソリューション」が、本気で私の頭の中をよぎり始めます。
試合開始まであと10分を切り、さすがに焦りも出てきました。
今すぐ諦めて帰るか・・・、それともただひたすら待ち続けるか・・・。
さぁ、どうする、どうするんだ、俺っ!
葛藤がピークに達しようとしたその時、テント前にいる主催者側と思われる人物から、
1,000人を超す群衆に対して、思わず耳を疑ってしまうような通達があったのです!
「え〜・・・もぅ、チケット無しでスタジアムに入って下さい〜」
な・・・なんちゅう劇的かつ斬新な幕切れ・・・(ち〜ん)。
・・・群衆は一斉にスタジアムへとなだれ込み、
私も試合開始の数分前にはなんとか座席に着くことができて、
結果的には、一流選手のプレーを十分に堪能することができたのでした。
しかしほんま、これでええんかいな、インド・・・。
(Vol.120 おしまい)