ぶつくさと〜く
【Vol.133】 人力 (2013.2)
こちらデリーは、だんだんと日差しも暖かくなってきました。
土日の昼間などは、半袖と短パンで近所に出掛けてしまっているほどです。
(ええ歳して、まるで小学生やな・・・)
日本だと外に繰り出し、の〜んびり散歩でもして「あ〜気持ちいい」という気分になるでしょうが、
残念ながらデリーだと、空気のことが気になって、外出しても気持ちが休まりません。
そう、先月も書いた大気汚染の話。
デリーでも、ついに「在インド日本大使館」から注意の通達が来てしまいました・・・(泣)
(きっと私の先月のぶとくさと〜くを読んで対応して下さったのねっ! ←どあほぅ)
通達の文章そのままでは無いですが、要旨はこんな感じです。
■大気汚染が激しいと感じるときは、以下の対策をとることをお薦めします。
(1) 不要な外出や長時間の屋外活動は避ける。
(2) 外出時にはサージカルマスクを着用する。
(3) 窓の開放はなるべくせず、ドアや窓の隙間など外気の通り道をふさぐ。
(4) 空気清浄機を日常的に使用する。
そして、リアルな生のデータも貼り付けてありました。
昨今日本でも話題になっているPM2.5(直径2.5マイクロメートル以下の超微粒子)は、
デリーでの年平均が、1立方メートル当たり「89マイクログラム」、
そしてPM10は「259マイクログラム」とのことです。
(いずれも3年前、2010年のデータなので、今はもっと増えてるのかも)
まぁこれだけ書いてあってもピンとこないと思いますが、
例えばあの北京のPM10が「109マイクログラム(2012年)」とのことなので、その量の2.5倍。
(WHO(世界保健機関)の指針は「20マイクログラム」で、その13倍・・・)
PM2.5で言うと、日本の「環境基準」である「15マイクログラム」に対してその6倍。
(WHOの指針は「10マイクログラム」で、その9倍)
しかもインドの中でもデリーはズバ抜けて劣悪な状況だそうでして、
インド人はほとんど誰も気にしていないだけで、ほんとはきっと深刻な問題なのです!
って、もう2年も住んできたから、
今更ヤイヤイ騒いだところで何も変わらないのですけれどね・・・(泣)
何度も書いてますが、我々の常識では考えられないことが起こるインド。
すでにいろいろありましたが、まだまだ不思議なことに遭遇するもんです。
数ヶ月ほど前のことですが、ワタクシ専用車(えへ)の後部座席でノートパソコンを開きながら、
とあるインターネットのサイトで、航空券の空席検索をしていました。
数少ないインドの休日を利用して、どこか旅行へでも行こうかな〜と思って。
希望通りの空席が見つかったので、予約に進もうと「次へ」ボタンをクリックすると、
次のページでいきなり「空席はありません」と出ました。
いやいやなんでやねん、と思いながら、もう一度最初のページに戻って検索、
するとやはり今回も空席ありと書いてありました。
で、予約に進もうと「次へ」ボタンをクリックすると、次のページで「空席はありません」。
(う〜ん、ずいぶん短めのデジャヴやん・・・)
まぁ何にせよ、今すぐに予約ができないことは分かったので、
とりあえずその場は諦めて、パソコンを閉じることにしました。
するとその数分後。突然、私の携帯電話が鳴りました。
誰かな?と思って携帯電話の画面を見たのですが、どうも見覚えが無い番号。
例によって売り込みの電話だろうと無視しかけたのですが、
なんとなく気になったのか、その時は電話に出てみることにしたのでした。
すると電話の男はいきなりこう言ったのです。
「○○行きのフライトをお探しですか?」
「えっ!?俺がネットで検索してたのん、ど、どこから見えてるん??」と、
思わず走っている車の中から、周りをキョロキョロと探してしまいそうになりました。
(誰がこんなおっさんをパパラッチするんじゃいっ!)
で、話を聞いてみると、それはその検索サイトからの電話でした。
そして「今○○行きを検索されましたよね、こちらのフライトなら用意できますが」と、
なんと別のフライトを勧める内容だったのです。
さすがに実際に周りで誰かが見ていた訳では無いのでよかったのですが、
それにしても、これってちょっと怖くないですか?
何気な〜くインターネットのサイトで検索をしているだけで、
それを誰かが全部監視していて、いきなり実世界で電話がかかってくるって・・・。
とりあえずその場は「もう少し考える」といって電話を切ったのですが、
その後冷静に振り返ってみたら、少し「ぞっ」としました。
まぁでもこの辺の人件費の安さをフルに活かした「人力」の圧倒的なパワーが、
インドならではなんですよね。
ネットで予約できるシステムに切り替えて、人件費を削減しているのではなくて、
ネットでも予約できるシステムを作って、そこにさらに人をかけて対応させる・・・。
5階建のビルくらいなら、大型機械も一切使わずに、「人力」のみで建て切ってしまうこのお国。
ありとあらゆる場所で、今日もたくさんの人が何らかの作業をしている。
この12億人の「人力」パワーは、いずれ世界経済に大きな影響を与えるのかもしれません。
(まぁ・・・10人くらいいても、実際に手を動かして作業をしているのは1人だけで、
残りはその1人の作業っぷりをただ立って見てるだけだったりするのだが・・・)
さて毎年1月26日は、インドの共和国記念日(Indian Republic Day)の祝日です。
1950年にインド憲法が発布されたことを記念する日で、首都のデリーでは、盛大な軍事パレードが行われます。
上にも書いた通り、インドは休みが少ないので、
祝日や祭日があると、ついつい土日と併せてどこかへ旅立ってしまっていたのですが、
今年の1月26日は土曜日だったので、
旅行へは行かず、この盛大なパレードを見てみることにしたのでした。
パレードの3週間ほど前から、観覧席のチケットが発売されます。
一応一番いいカテゴリのチケットを購入、インドではかなり高額の300ルピー(約500円)もしました。
(流石にこの座席エリアには、外国人と金持ちインド人しかいませんでした)
場所はインド中心部、デリーで最も整備されているのではないかと思える、
大統領官邸からインディアゲートを結ぶ、まっすぐに延びた大通り「ラージ・パト」。
安全上の理由で、この日は一部のメトロが運行停止になり(動いていても駅を通過)、
ラージ・パトを取り囲む大きなエリアは車の入場が制限され、
流石に軍事パレードだけあって、仰々しいほどのチェックがなされていました。
そして当然のように、バッグもカメラも、携帯電話でさえも会場への持ち込み禁止。
財布はOKなのですが、中の小銭(コイン)は全部セキュリティーチェックの場で捨てるように言われました。
(あいつら、あれでかなり儲かったやろなぁ・・・)
さて、パレードが始まる朝9時(早っ!)には無事会場に到着し、あとは開始を待つばかり。
そして、来賓であるブータン国王(かな?)や、インドの大統領・首相などが到着し、いよいよ開始です!
軍事パレードなので、当然戦車や装甲車がずんずん通るわ、一糸乱れぬ行進の軍隊が続々登場するわ。
そして今回初めてとなる「Agni 5」という長距離ミサイルもお目見えして、拍手が湧き起っていました。
(射程距離は5,000キロ、中国全土も狙えるのだそうです)
ただしここはインド、軍事パレードは、ただの軍事パレードではありません。
(なんのこっちゃ?)
軍隊でも、次第にど派手な衣装になってきて、ついには騎馬隊だけではなく圧巻の「ラクダ隊」まで登場。
(なんと、後ろに従えている楽団まで全員、ラクダの上で普通に楽器を演奏していたのには恐れ入りました)
そしてインド各州からの山車(フロート)が登場し、派手な衣装の若者たちのダンスタイムもやってきて、
もう何が何だかよく分からないほどの、あれやこれやの大騒ぎ。
(軍、全然関係ないや〜ん!)
そしてクライマックスは、バイク隊による「曲芸乗り」。
バイクに後ろ向きで立って乗っていたり、5〜6台横並びで30人以上が組み体操の形で乗っていたり、
中国雑技団よりも危険でアクロバティックなバイク隊の連発に、
正直、驚いてええやら、笑ってええのやら・・・。
(ほんまに、軍、全然関係ないや〜ん!!)
ただ最後は、空軍の登場で、大型輸送機から小型の最高性能の戦闘機まで上空を飛びまくり、
頭の真上で繰り広げられる超高速の航空ショーには、大きな興奮がありました。
いや〜、ほんと、とてもとても楽しめる、Republic Dayのパレードでした。
みなさんも、もし機会があれば(無いか?)、是非見学してみて下さい。
しかし・・・お隣のあのパキスタンと関係悪化状態にあるお国の一大軍事パレードが、
こんなに面白おかしいって・・・それで大丈夫なんかぃな・・・(苦笑)
(Vol.133 おしまい)