どたばた旅行記
6.激走!アイスフィールドパークウェイ
2003年冬、カナディアンロッキーの中心地バンフでレンタカーを借り、北上を開始しました。
そう、約200km離れたコロンビア大氷原で、念願であった氷河を見るために。
レンタカーを借りるため、バンフの中心街からフェアモントバンフスプリングスホテルまで30分ほど歩き、
朝9時すぎに出発、まずは途中のチェックポイントであるレイクルイーズを目指します。
レイクルイーズまでの行き方は2つあり、私は道は広くないが美しい景色が見られるという、
ボウバレーパークウェイという道を選びました。
しかしそこはいきなりの雪道。
どこがセンターラインなのか、どこまでが道幅なのかよくわからず、
ちょっと気を抜くと路肩に盛られた雪の塊に接触しそうになります。危ない危ない。
(というか実際に開始数分で2回も接触した・・・)
おぃおぃ、出発していきなりこれかよ、と雪道に三村風のツッコミを入れるも、人っ子一人おらず寂しいだけ。
レイクルイーズまでの50kmもの距離と、あまりの交通量の少なさ(車1台も通らず)にへこんだ私は、
あっさりと引き返して、もう一方のトランスカナダハイウェイにて一路レイクルイーズを目指すことにしました。
流石ハイウェイ、綺麗に除雪されていて、会長にご挨拶・・いや、快調に車を飛ばせます。
(初めからこっちにすりゃよかった〜)
この季節のバンフは暗くなる時間が早いため、まずはレイクルイーズを素通りして、
コロンビア大氷原方面にまっすぐ向かうことにしました。
レイクルイーズから先は、アイスフィールドパークウェイ、
まさにカナディアンロッキーのハイライトが目白押しの公園道路に入ります。
片道1車線の道なのですが、またもや雪道になり、通る車も激減しました。
しかしここには別の道がないので、仕方ない。
他の車はわりと高速(時速100kmほど)で走っているので、
あぁ、この地方の車はちゃんとここの道路に適したタイヤを使っているんやな〜と安心して走りました。
とにかく、コロンビア氷河まで残り150kmほど!
 
夏には様々な色に染まる湖たちも、この季節は完全に雪に覆われます。
青い空・緑の木々・白い湖面の雪が見事にマッチして、美しい光景に心を奪われます。
車から降りると身を切るような寒さですが、
それでも新鮮な空気を思いっきり吸い込むと最高の気分に浸れました。
鳥も車のそばまで来て私にごあいさつ。
(エサをもらえると思って来ただけやろけど)
*****
美しい風景にテンションが上がり、
ひょっとしたらこのままコロンビア大氷原の先のジャスパーという町まで行けるかも、
などと余裕をかましながら、アイスフィールドパークウェイをさらに北上します。
もうちょっと走れば、氷河が見れる!
快調に雪道を飛ばしながら、とあるゆるい右カーブに差し掛かったその瞬間、
急に車のおしりが必要以上に左へ振られました。
いやいや、なんでやねんと思いつつ、軽くハンドルを左に切ると、
今度はおしりが必要以上に右へ。
うっそ〜ん、雪道で滑って、車の制御が全然効いてないや〜ん。
ぴゃ〜〜〜〜!!
こらもう何をしても無理やな、と思った私は、ハンドルを固定したまま仕方なくブレーキ。
車は雪道をトップスピードのまま優雅に右スピンしながら滑る。
フロントガラス越しの映像は前後左右に目まぐるしく変わる。
うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜。
結局車は1回転半し(伊藤みどりには及ばず)、右の路肩の雪深い場所へ前から突入、
車道からはみ出して、車の前が下に沈み込むような形で止まりました。
あ〜あ〜あ〜、と思って車から出ようとするも、車の前半分が雪に埋もれて運転席のドアが開かず。
しゃあない、とりあえずバックで車を脱出させるかと思い、数台車がとりすぎるのを待ってバックを開始しました。
でも、なんと前輪が雪を削って空回り。
げっ〜〜、車が埋まりすぎてて抜けられへんや〜ん!!
そうこうしているうちに、車が1台止まり、外人の若いにいちゃんが助けてくれることになりました。
前輪が完全に雪に埋もれていたので、彼は助手席から取り出した(何故か)フリスピーで掘り起こしてくれる。
きっと現地の人がやる方法がベストなんやろうと、運転席の窓から脱出した私は、
ジーパンを雪まみれにしながらも、足で雪をどんどんかき出します。(道具なかったんで)
両前輪が見えるまでになり、いざバック開始!
しかしやはり前輪が空回りしてまったく動きません。げ〜〜、めっちゃやばいやん!!
しかもタイヤが雪を掘りすぎて土を削り、こすれてゴムのいやな臭いが・・・。
そのうち2台目の車が止まり、私と同じ歳くらいのスキーヤーのカップルの男性が手伝ってくれることになりました。
近くの枝を折って、タイヤの下に敷くなど、いろいろ試すも結局無理・・・。
15分ほどの格闘のあと、車を揺らして車の下に詰まった雪を払い落とすなどして完全に雪を取り払い、
3人やや諦めかけの状況の中、再度チャレンジ。
今度は運転をスキーヤーに代わってもらい、私とにいちゃんが車の前を持ち上げて押すことに。
助かりたい!!って時には人間、かなりの力が出るもんです(いわゆる火事場のくそ力)。
う〜ん、車ってこんなに持ち上がるのね、というくらい車が動き、
タイヤが地面を捉え、とうとう脱出に成功したのでした。
ということで、無事脱出した後の写真。
縮尺がわかりにくいですが、車の前半分は雪をざっくり掘ってました。
助けてくれた二組に礼を言って、ゆっくり走るように注意され、その場を後にしました。
(いや〜今回はかなりやばかった・・・とりあえず対向車が来てなくてよかった・・・)
その後、「二度と80キロ以上出すかっ!」と誓い、安全運転でコロンビア大氷原への旅を再開しました。
滝の落ちる様子が涙のように見えるという「すすり泣く滝」。
滝は完全に凍っており、無数の巨大なつららが崖に刺さっているという感じです。
写真を取っていると、どこからか「おーい」という声が。
きょろきょろして、そのがけの中ほどを良く見ると、
アイスクライミングをしている人が小さな点ほどの大きさでちらほら見られました。
 
そしていろいろあった後、ついにコロンビア大氷原の玄関・アイスフィールドセンターに到着。
当然センターは閉まっており、看板にもすべてオレンジのラベルで「CLOSED」の文字が。
トイレまで閉めるなんて、ひどい仕打ちやおまへんか。
夏は、氷河の上を雪上車で走り、氷の上に立つことが出来るツアーがこのセンターから出ているそうです。
冬場はもちろん人がいる気配もなく・・・駐車場に止まっていた車は、私の他に1台だけ。とほほ。
そしてセンターの建物から道を挟んだ反対側には、
雪が被ってはいるものの、青い氷の固まりが顔を出しているではありませんかっ。
出た!まさしく氷河!!
車を駐車場に止め、氷河に向かってトレイルをまっすぐに突き進みます。
と言っても、雪に埋もれててどこが道か全然わから〜ん。
しかし、雪に足を取られようが、斜面をすべり落ちようが、一心不乱に氷河を目指しました。
大自然の景色の中、まったく人の姿が見えない状況で氷河に向かって歩いていると、
なんとなく青木が原樹海へ向かう人の気分がわかるような気がしました。(怖っ)
 
写真では分かりにくいですが、左の写真は中央に青い氷が見えており、
右の写真は山の上右半分はすべて氷に覆われています。
氷河期時代に形造られた氷の塊が、消失と生成を繰り返しながら今なお残っているというその事実に、
ただただ感動してしまいます。
残念ながら氷河の手前にある分厚い雪にはばまれていて、これ以上近づけそうになく、
しゃーないこのあたりまでか・・・と、歩みを止めました。
氷河の上に立ちたかったんやけどなぁ〜。
(まあクレバスに落ちて死なずによかったか)
そして、しばらく氷河を目に焼き付けてから、レイクルイーズ方面へ戻ることにしました。
 
安全運転を続けたまま150km、無事レイクルイーズ(ルイーズ湖)へ到着。
こちらも湖面は真っ白に覆われており、
分厚い氷に覆われた湖面では、アイススケートを楽しむ人々の姿が見られました。
夏には神秘的なエメラルドグリーン色の湖面と、
その後ろにそびえるビクトリア氷河のコントラストが大変美しい場所だそうです。
純白に染まった景色の数々も美しかったですが、今度また夏の美しさを見に来ようと思いながら、
トランスカナダハイウェイをバンフへと引き返したのでした。
いや〜、とりあえず無事生きて帰れてよかったよかった。はっはっはっは〜ぁ。
(おしまい)