どたばた旅行記

10.イエローナイフ ~氷点下40℃の世界

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イエローナイフ、そこはカナダ・ノースウェスト準州の州都。
北緯62度、オーロラベルトの真下にあるというその町へ、まさにそのオーロラを見るために向かいました。

以前、同じくカナダのホワイトホース(写真はこちら)に行った時は、
残念ながらぼんやりとしかオーロラを見られなかったので、
今回はそのリベンジも兼ねた3泊4日の旅、という訳です。

*****

【第一日】

トロントからカルガリーを経由して約7時間(国内やのに遠っ!)、
天候いまいちのイエローナイフへと到着しました。

空港1   空港2

Air Canada Jazzの飛行機が到着した、見るからに寒そうなイエローナイフ空港では、
2010年バンクーバー冬季オリンピックのロゴにも登場する「イヌクシュク(inukshuk)」という石の人型の写真と、
ちょっとだけリアルなホッキョクグマとが待ち構えていました。

イエローナイフの町1   イエローナイフの町2  

人口2万人弱のイエローナイフの町の中心部。
道路には、雪というよりは、氷が積もってるという感じです。

さて、オーロラを見るためには、通常、夜9時頃に町のホテルを出発するツアーに参加して、
町の光が届かない郊外のオーロラ観賞用の施設(たいてい湖近くなど開けた場所にある)に向かい、
そこで温かい飲み物を飲んで暖を取りながら、オーロラが現れるのを待つことになります。

以前に比べてずっと減ったそうなのですが、オーロラを見るために日本人がたくさん来る町なので、
日本人向けのオーロラツアー(宿泊とセットが一般的)もあり、誰でも安心して参加できます。
(現在は「オーロラビ○ッジ」さんだけ・・・かな?)

ホテルは別途で予約したので、宿泊なしのオーロラツアーにだけ参加させてもらうつもりだったのですが、
「オーロラのみ」の金額を事前に問い合わせたところ、
不況の煽(あお)りもあるためか、返ってきたのはなかなかのビッグプライス(泣)

飛行機代とホテル代までで精一杯の我々としては・・・結局ツアー参加を断念し、
無謀にも「レンタカーで適当なところへ行って見ようか」ということになっていたのでした。
(以前のホワイトホースでもレンタカーでオーロラ見に行ったし・・・まぁほとんど見れんかったけど)

ホテルにチェックインした後、早速近所でレンタカーを借りようと、
予約していたレンタカーのオフィスがある場所へ住所を頼りに行ってみました。
すると、そこにはオフィスがあったらしき「形跡」だけはあるものの、実際には誰もいない・・・。

「ネットで数日前に予約したとこやのに、そこにオフィスが無いって・・・どゆこと???」

仕方ないので、近所の喫茶店のような店に入って尋ねてみると、
「あぁ、店舗はもう空港にしか無いよ」との回答が。

「ほんの数日前に予約できたくせに、なんでやねん!」と軽く独りツッコミを入れつつも、
レンタカーが無いとオーロラを見に行くこともできず、
それやと「ただ寒い地域にやって来ただけの人」になってしまうので(罰ゲームやがな)、
空港のレンタカーオフィスに電話して文句を言い、
空港までのタクシー代をレンタカー会社持ちにするという条件で、レンタカーを取りに行ったのでした。
(せこっ)

レンタカー1   レンタカー2
・・・てことで無事に借りることができたレンタカーはこちら。
悪夢のザ・ウェイブの時ようにスタックしてしまわないようにと(詳細はこちら)、
奮発して4WD車を借りることにしました。
クマの形のナンバープレートがちょっと可愛らしい。

ちなみに、イエローナイフの車はもれなく前のボンネットから太い電源ケーブルがベロンと飛び出しており、
もし朝、寒さのためエンジンが掛からなかったら、
どこかの電源プラグに差し込んでスタートできる仕組みになっていました。

気温

さぁ、お待ちかねの夜になり、ついにオーロラへ向けて出発です!
町の中心部「YK Centre」にある温度計はすでに「-33℃」を示していました。

で、肝心のオーロラを見るためにどこに向かうかなんですが、
どこが良さそうかを町のインフォメーション等で聞いたところ、
口を揃えたように「イングラハムトレイル(Ingraham Trail)」と言われていました。

イングラハムトレイルは、イエローナイフから東に65kmほど延びるくねくねのハイウェイのことで、
さらにその道は、冬場だけ凍った湖の上に開設される無数の「アイスロード」を経由して、
イエローナイフの300kmほど北東にある「Lac de Gras」というダイヤモンド鉱脈のある地へと繋がれています。
(ヒストリーチャンネルの人気ドキュメンタリー番組「アイスロード・トラッカーズ」で、
巨大な重機を積んだ大型トラックがバンバン走り抜ける氷の道路です)

とは言え、実は事前にある程度はオーロラを見られそうな場所を下調べをしていたのでした。
オーロラビレッ○さんのオーロラ観賞施設がある場所はだいたい分かっていたので、
「その近くまで行けばきっと見えるんやろ」といういやらしい魂胆で、
Google Mapの「Satellite photo(衛星写真)」の地図を使って、
広い道路沿いでかつ湖がすぐ前に広がっていそうな場所を、血眼になって必死で探し当て、
だいたいこの辺に行こうと目星を付けていたのが、まさにそのイングラハムトレイル沿い、
イエローナイフから約20kmのところにある「Prosperous Lake」という場所だったのでした。

Prosperous Lake

目星を付けていたとは言え、ほんとにそれが観賞に適した場所なのかは行ってみてのお楽しみ。
実際にはそこは立ち入り禁止の場所かも知れないですし、
入れたとしても、周りが明るくてほとんど何も見えないまま帰る羽目になるのかも知れません。
が、到着してみると問題なく入れて、そこは目の前に凍った白い湖が広がる大変見通しのいい場所でした。

ただいくつか難点を言うと・・・

・ 道路が近いので、ちょくちょくアイスロード・トラックが走り、写真に光が入る可能性があること、
・ ○ーロラビレッジさんの施設に近いので、上空の一部が若干明るく見えること
 (まぁこのおかげで人気(ひとけ)の無い暗闇にいても若干安心感があるのですが)、
・ そして何よりも、オーロラ観賞のために何時間も待たないといけないのにトイレが無いこと
 (実はあったのかも知らんけど、暗くて何も見えんかったし)

・・・と、この辺を許容できるのであれば、この場所はオーロラ観賞にすごくいい場所だったと思います。
(もしチャレンジされる方がおられましたら是非どうぞ)

さて、町の温度が -33℃ということは、きっとこの凍った湖面の上は -40℃、
いや何ならそれ以下やったんとちゃうか?と思うのですが、
とにかく、車から出て空を確認してはデジカメを固定して撮影し、
そして手が動かなくなっては車に戻り(デジカメの動作もめっちゃスローになる)、
そしてまたしばらくしたら外に出る・・・という作業を何度も繰り返していました。

初日のオーロラ

その日は曇り空だったので、ほとんど諦めていたのですが、
それでもぼんやりと空が明るくなり始めたかと思うと、
す~っと何本かの筋が出て、デジカメで撮影しても写るくらいの明るさになりました。

小さな感動とともに、この日は4時間ほどの滞在で、午前2時頃に町へと戻りました。
(少なくとも以前のホワイトホースよりははっきりと見えてよかった・・・)

*****

【第二日】

二日目は、イエローナイフの町の観光からスタートです。
最初は、町が面するグレートスレイブ湖の上を走る、アイスロードへと向かいます。
冬の2ヶ月間だけ出現する、湖の上を対岸まで走る氷の道です。

ガイドブックに書いてある地図の通りにアイスロードを目指して行くと、
何故かどうも怪しい感じの細い道へと入って行きました。
「結構広い道のはずなんやけどなぁ?」と思いながらも、その道は確かに凍った湖面に続いています。
さらに進み、細くなった下り坂を数メートル下ると、ついに広い湖面の上に出ました。

んが、湖面ではあるものの、完全に整備されていないデコボコの雪の上。
がたがたの雪道をスリップしながらもなんとか進みますが、湖面を50mほど走ったところでついにストップ。

こらどう考えても違うところやな~と思いつつも、
「ふっふっふ、こんな時のために4WDを借りたんじゃい」と余裕の表情の私。
気にせずUターンして戻ろうとしたのですが、

「あれ、車、動かへん・・・」

そう、雪にめり込んでしまったタイヤは完全に空回り、
こうなると4WDだろうが100WDだろうが関係なく、前にも後ろにも進むことができません。
てことで、ザ・ウェイブに続いてまたもやスタック・・・(チ~ン)

と、悠長なことを言ってる場合ではありません。
ここは湖の上、しかも整備されている訳ではないので、
いつ氷が割れて、車ごと0℃の水の中に放り出されてしまうか分からないのです!

ヨメと運転を替わり、後ろから、そして前から必死のパッチで車を押すものの、
キレイ~に空回りしているタイヤの前には意味もなく、なんなら段々と下の氷を削ってる・・・。

「あかん、このままやと落ちてまう、近所の家の人に助けを求めるか・・・」と思っていたところ、
たまたまスノーモービル2台(計3名)が、先ほどの細い道から飛び出して来ました。
助けをお願いするまでもなく(どう見てもスタック以外の何物でもないし)、
状況を察してくれた若い兄ちゃんたちと女性ツアー客らしき人が、一緒に車を押してくれることになりました。

運転席に戻った私は、祈るような気持ちでアクセルを踏み込みます。
すると・・・4人がかりで前から押してもらった車は、ゆっくりと動き始めたのです!
やった~~~~!!

と、進み始めたまではいいのですが、がたがたの雪の上をバックのまま50m進まなければなりません。
湖面上でもう一度止まってしまうと、またさっきと同じ状況に陥ってしまうんです。

普段あまり車を運転してないし(えへっ)、バックも決してうまい訳ではないのですが(えへへっ)、
もう一度スタックする訳にはいかんので、なかなかのスピードを保ったまま、車はバックを続けます。
雪の上を何度もスリップし、左右に振られながらも、車はなんとか進んでゴールまであと少し。
そして最後の難関、細い上り坂へと向かいます!

必死の形相でハンドルを握り締める私。
車内に響く「おりゃ~!」という意味不明の奇声とともに、車は勢いよく坂を駆け上がりますっ!
なんとか上り終えたところで、車は、見えていなかった路肩の雪の塊にザックリと突入。

兄ちゃんたちが遠くから心配そうに見ていたのですが、まぁ普通の道路まで戻ればこっちのもんで、
雪の塊からも脱出、こうして地獄の水没事故を免れることができたのでした。
そして押してくれた兄ちゃんたちにお礼を言って、「本当の」アイスロードへと向かったのでした。

・・・ガイドブックのあほんだら~!

※そう言えば、数年前に一回転半して車ごと雪に埋まった時(詳細はこちら)も、
一緒に押してくれたのはここカナダの人でした・・・う~ん、親切な国でよかった。
(って、ほんと、ありがとうございます)

アイスロード1   アイスロード2   アイスロード3

ということでようやくアイスロードに到着。
さっきと違って、入口、めっちゃ広いやん・・・。
今日はコンディション良く、車もトラックも走れるようになっているようです。

アイスロードを進んで行くと、ところどころ透明の氷がむき出しになっていて、
まさにこの下に冷たく暗い湖が横たわっているのだと、はっきり実感できます。

いくら整備されているとは言え、ひび割れも見えていて、流石にちょっと怖かったですね。
(ほんま、車ごと落ちんでよかった・・・)

州議事堂1   州議事堂2   州議事堂3

続いて、ノースウェスト準州の州立法議事堂へ。
中央の写真が会議室で、ホッキョクグマの皮が中央にデ~ンと横たわっていました。

右の写真にある立派な「職杖」が見所の一つらしいのですが、
たまたま議会が始まるところで、その杖を取り出すシーンに出くわし、
先っちょに付いたでっかいダイヤモンドを、間近で見せてもらえました。

雷鳥1   雷鳥2

町を車で走っていると、(たぶん)雷鳥たちが体を寄せ合っているシーンに遭遇しました。
雷鳥の足って、その体には不釣合いなくらい、こんなに太くて毛がふかふかなんですねぇ。

さて夜10時になり、二日目もまた同じ「Prosperous Lake」へと向かいます。
天候は昨日よりは良いとのことだったので、期待度もアップ。

二日目のオーロラ

深夜1時近くまで、昨日よりも少し強い筋状のオーロラが何度か現れました。
まぁ今日もわりと見られた方やなぁ・・・と思っていたところ、
急に空の上が慌しくなってきました。

二日目のオーロラ2   二日目のオーロラ3   二日目のオーロラ4

「う、うぉ~~~~!!」

星が輝く天空で、光がカーテンのようにゆらゆらと揺れているじゃありませんか!
思わず、-40℃という寒さも忘れて、ぼんやりと空を眺めてしまいます。
もちろん写真なので、肉眼ではこんな緑には見えませんが、
空の上で繰り広げられる神秘的な白い光のショーは、十分に感動を与えてくれました。

何時間もクソ寂しい場所で待った甲斐あって、
好きなように写真を撮り、好きな時間まで眺めることができて、本当に良かったです。
(ちなみに最後の写真は、軽い降雪のためフラッシュが使えず、人物を車のライトで照らして撮影・・・)

*****

【第三日】

オーロラは昨晩十分に見ることができたので、
「もう今晩はええやろ」ということで(やっぱり結構過酷だったのね・・・苦笑)、
3日間借りる予定だったレンタカーを2日間で返却し、今日はたっぷり「犬ぞり」を楽しむことにしました。
(現地で運悪くオーロラを見られなかった方には、ほんと申し訳ないですが・・・)

例のオー○ラビレッジさんに問い合わせると、やはり自信たっぷりの値段設定。
ただ流石にこればかりは、自分たちでその辺の野良犬を捕まえてきてもきっと走ってくれないので、
仕方なくネットでいろいろ検索し、
結局「Beck's Kennels」さんというところにお願いすることにしていました。
(HPに出てる値段は少し古いようですが → http://www.beckskennels.com/

犬ぞり1   犬ぞり2   犬ぞり3

お犬様たちがワンワン吠える中、タクシーでBeck's Kennelsに到着。
二人乗り(一人は立って操縦)の犬ぞりは、凍った湖面の上を走り抜けます。

6頭の犬たちが片道30分以上走って到着したのは、仮設のテントのようなところ。
そこで薪(まき)ストーブを焚き、温かい飲み物を飲んで生気を取り戻した後、
さらにオプションとしてお願いしていた「スノーモービル体験」も楽しみました。

すべてを満喫して、さぁまた30分かけて犬ぞりで戻るか~、と帰る準備を始めました。
そして準備が完了し、スタッフの人が犬たちを出発させるために「GO!」と声を掛けたその瞬間、
どこかで「プチン!」という音が・・・!?
ふと前を見てみると、犬たちを繋いでいたそのロープが、途中で切れてしまっているじゃあ~りませんかっ!
(久々に「チャーリー浜」登場)

そんなことにはお構いなく、犬たちにとっては「GO!」の命令に従うまで。
6頭のうち、解放された最初の4頭だけが、全速力で駆け出し、
我々を置いて、遥か彼方まで走って行ってしまたのです!
(いつもより随分軽くて、彼らにとっては快適やったでしょうけど)

犬ぞり4   犬ぞり5

てことで、夕日が沈みかける中、寂しそうに氷の上で待たされる2頭の犬(と2人の人間)。
あまりの寒さのためか、2頭はずっと体を寄せ合うようにくっ付いていました。

10分以上待たされた後、4頭の犬たちは無事に連れ戻されてきて、新しいロープで繋がれ、
一路スタート地点に向けて、日も暮れてさらに寒くなった湖面の上を戻ることになるのでした。

走ってる途中に写真を撮影しようと思ったのですが、
-30℃くらいの風を常に真正面から受けている状態だと、
厚手の手袋をはずして素手になった瞬間に手の感覚が全く無くなり、
ほとんどシャッターを切ることはできませんでした・・・。

*****

【最終日】

この日は午後4時頃の飛行機に乗り、エドモントンというところで乗り換え、
夜遅くにトロントに到着するというスケジュールになっていました。
なので、朝からホテルの近くでお土産を買うなどして、ゆっくりと過ごしていました。

さぁ帰るか~と、余裕を持って午後2時半くらいに空港に到着。
Air Canada Jazzのカウンターへ行ってチェックインしようとしました。
すると、

「残念ながら、今日中には帰れないわね」

と、いきなりのカウンターパンチ。
(空港のカウンターだけに)

「え、なんのこっちゃ???」と思って、出発時刻を示したモニターを確かめてみると・・・

遅延1   遅延2  

はぃ、確かに乗る予定の飛行機に「遅延(Delayed)」と出てました(泣)

どうやら、エドモントンからイエローナイフへ向かう飛行機が遅れているため、
その戻り便であるイエローナイフ発の便も1時間以上遅れてしまい、
乗り継ぎのトロント行きの便には、確実に乗れないとのことでした・・・(チ~ン)

「ガビ~~ン!」と中高年層ばればれのショックの受け方で途方に暮れつつも、
「エドモントンまでは行けるのでそこまで行ってね」と言われたので、
この先どうなるのかも分からないまま、とりあえずエドモントンへ。

そして、到着したエドモントンの空港で事情を説明し、
夜行便にでも乗り継げるかと思ったのですが、そんなものは無いとのことでして・・・。
結局、翌日のトロント行きを確保してもらい、
その日はAir Canadaが用意してくれたエドモントン市内のホテルにて、
もう1泊滞在する羽目になってしまったのでした。
(そんなに換えのパンツ持ってないっちゅうねん)

*****

と、まぁこんな感じで、いろんなハプニングはあったものの、
たっぷりと満足できる、楽しいオーロラの旅だったのでした。
(でもやっぱり、めっちゃ寒かった・・・)

(おしまい)


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